嵐の夜

子供のころ、台風が来るとしばしば停電になりました。

ラジオの天気予報で台風の接近が伝えられると、大人たちは雨戸を釘で打ち付け、どこかに仕舞ってあった普段見かけない太いローソクを取り出して来ました。

停電になると早速用意したローソクに火を灯します。

子供だった私は何となくウキウキしながら、すきま風に揺れるローソクの炎とそれが作る人影が障子に揺れるのを飽きずに眺めていました。

そして寝るまえに祖父にせがんでは毎日読んでもらっていた物語の中の主人公になった気でいたものです。

台風が去り、夜が明けると打って変わったような良い天気。

主人公気分は消えていました。

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