イタリア、山あいの町

イタリアンカジュアル、通称イタカジがファッション界に旋風を巻き起こす少し前のこと、ファッション誌の仕事でかの地に取材同行して写真を撮りました。

取材先は著名なファッションデザイナーのアトリエとブティックがほとんどで、興味深い写真になる工房や工場の現地取材はほんの少しでした。

その中で今も記憶に残っている取材があります。北イタリアの山あいの町にある極めてオーソドックスな英国調のスーツメーカーで出会った人々です。

工場の一角にある古く落ち着いた広い控室に通され、広報の人から紹介されたのは見るからにベテランの男性、女性でした。男性は仕上がったスーツの最終点検をする職人、女性は手縫い部分の作業をするお針子さん。ふたりとも入社以来各自の部署で、与えられた作業をそれぞれ極めてきた私たちのスタッフです、と紹介されました。

ふたりとも無口で、声にしたのは自己紹介の自分の名前だけ。

あとはずっとはにかんだような、困ったような笑顔だけのコミュニケーションでした。

写真作品はインスタグラムにもあげています。合わせてご覧いただければ幸いです。