毛皮のコート

その昔、フランス映画が大好きでした。

当時は大画面、大スペクタクルのアメリカ映画全盛の時代でしたから、その他の外国映画は趣味的な小さな映画館でしか見るしかありませんでした。

その頃のヨーロッパ映画はリアリズムが主流です。ハッピーエンドの幸せ気分で劇場を出られる作品はなく、とりわけフランス映画は退廃的なものばかり。

警察に追われる銀行強盗や若い男に入れ込むお金と暇のある女性など、世間からはみ出た人が主人公の作品が大半でした。

そんなフランス映画に出てくるちょっと訳ありのマダム、マドモアゼルが身にまとっていたのがヒョウ柄とかミンクの毛皮のコートでした。およそ東京の街角ではお目にかかれない装いです。

フランスから遠く離れた新宿の場末の映画館に出入りしていた私には、ため息の出る世界でした。

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